オレンジ

男の人って本当に、自分の健康とか栄養なんかには無頓着だなぁと、拓真を見ていてよく思う。
もちろんそういうことにきちんと気を付けている男の人も世の中にはたくさんいるのかもしれないけれど、拓真の場合は放っておくと一日三食トータルしても野菜をほとんどゼロに近いくらい食べていなかったり、昼に唐揚げ弁当を食べたにも関わらず夜は牛丼だったりすることがざらにある。

だからあたしは、拓真の家で料理をするときはできるだけヘルシーな野菜中心のメニューにするようにしているのだった。

冷蔵庫に豆腐を仕舞っていると、奥の方に中途半端に余っているキムチのパックが目に入った。
確か、この間使いきれなかった豚肉も冷凍室にある筈だ、と思い立ち、フリーザーを開ける。
思ったとおり豚肉の塊を見つけて、キムチ鍋にすることに決めた。

壁にかけられた、黒いフレームのデジタル時計の表示は17:17。

拓真が帰ってくるまで、どんなに早くてもまだ1時間以上は余裕がある。

残業なく帰って来たとしたら、ちょうど出来上がる頃に着くかもしれないな。

手首に巻いたシュシュで、髪の毛をひとつにまとめながらそんなことを思っていると、不意にインターホンが鳴った。

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