オレンジ
「わかるよ。君が何考えてるか」
「…え?」
「俺のこと、気持ち悪い?」
「………………」

あたしの沈黙を、肯定だと彼は受けたようだった。


「だよね」

そう言うと彼は、ハハハと明るい声で笑
った。

「そりゃそうだ。きっとそうだろうなと思って電話した。勝手に登録したのはさすがにやりすぎたけど、ごめん」
「えっと…あの」
「大丈夫。俺、怪しくないから。つっても、不審だと思うけど」

なんかまた、やっぱり
さっき会ったときと、雰囲気が違うような。
電話だと饒舌。


「あのぉ…」
「俺、結城拓真っていうんだ。24ね。三茶で一人暮らししてる社会人。ちなみに生まれも東京。普通に働いてる。未婚。
彼女、なし。あと、質問ある?」
「あの、そういうことじゃなくて」
「まぁいいや。あとはまた会ったら話す。とりあえず、怪しくないし、君に危害与えるつもりはないから、そこは安心し
て」

一方的に弾丸トークを繰り広げられて、あたしはそのひとつひとつを噛み砕くのに精一杯。
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