オレンジ
けれど、じゃあ、今までのことはなんだったのだろう。
あたしと拓真との出会いは、あゆみさんありきで成立したものだった。
あゆみさんがいなければ拓真はSMILYの存在も知らなかったのだ。
たまたま入ったカフェで拓真があたしを見つけてくれたということに、少なからず運命的なものさえ感じていたあたしはバカみたいだ。

「でも、確かに最初はミナミに会うためにあの店に行ってたけど、お前がバイトを始めてすぐ、俺は本当に彩乃を好きになったんだ。そこからのことは、彩乃がわかってる通りだよ。そもそも、ミナミはもう結婚してんだし」
「…でもね、拓真」

あたしは、それを口にしたら終わりだとは思っていた。
だけど、言わずにはいられなかった。

「それならどうして、あたしと付き合い始めてからもあゆみさんと会ってたの?それって、まだあゆみさんに少しは気持ちがあるってことでしょう?」

あたしと知り合う前の拓真の恋愛に口を出すつもりはないし、元カノがいたとしても、それがあゆみさんだったとしても、それを隠していたとしても、そこまでなら許せた。

だけど、あたしがいながら、拓真はあゆみさんと会い続けていた。
それを知ったらあたしがどう思うかを、拓真が考えなかったわけがない。



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