オレンジ
あぁ、ヤバイ。

何がヤバイって、約束の日が明日に迫っている。
いや、それがヤバイわけじゃない。
なのに、彼からの連絡がない。
やっぱり、騙されたんだろうか。
見るからに騙されやすそうな顔をしてたから、からかわれたんだろうか。


何よりも「ヤバイ」のは
あたしのこの、精神状態だ。


騙されたのか、なんだ、やっぱそうだよ
ねアハハ、あいつやっぱただの最低じゃん!的なテンションで誤魔化せそうにないこの気持ちの落ち込みようが、どうに
もヤバイ。マズイのだ。

これじゃあ、まるで
あたしが、彼とのデートを楽しみにしていたみたい。

右手に握り締めた携帯の液晶に表示された時計は、21時15分を示している。


あの約束を交わして以来、一度も連絡は
来ていない。

着信履歴を確認してみても、新たな着信
はない。
アドレス帳画面をスクロールして、「結城拓真」を表示する。
あたしのほうから掛けてみようか。
でも、それじゃまるで催促してるみたい
だし。


この動作を繰り返して、もうそろそろ2時間が経つ。


…ヤバイ。

ダメだ、やめよう。


携帯を、充電器に繋ぐ。
もうきっと、掛かってこない。
やっぱり全部、冗談だったんだ。
諦めて、お風呂に入ろう。

そう思うと同時に、自分の思考に対して問いかける。

「諦めて」って、どういうことよ…?
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