俺と初めての恋愛をしよう
柴野は、おどけた感じで言ってみせた。
まじめな今日子は、経営者も楽じゃないのだと、共感してしまった。
まじめすぎる今日子の様子を見て、柴野は、笑って冗談だよ。と言って、また笑いを誘った。
食事は全て食べ終えたが、柴野の気さくさと、ワインのアルコールで、会話が弾んでいた。

「あの、柴野さん」
「ん?」

別に聞かなくてもいいけれど、やっぱりなんだか知りたいと思う、後藤の過去。
今日子を新入社員の頃から知っていた後藤は、どのような年月を過ごしてきたのだろうか。
根掘り葉掘り聞くのがはばかられて、後藤にも聞けずにいた。

「部長は、その、どんな人、あ、違う、えっと、その」
「どんな学生時代だったか、今日子ちゃんと知り合って、どんな風だったか。そんなことを知りたい? ってことだよね?」
「……はい……」
「今日子ちゃんは聞きたくないこともあるかもしれないけど、後藤はね、あの容姿でしょ? 想像通りモテモテだったさ」

それは分かっていたことなので、驚かない。

「後藤も若かったし、男の頭の中は女のことばっかりなんだよ。後藤だけじゃなく皆ね」
「はい、わかります」
「厳しい受験が終わって、楽しいキャンパスライフ。それはバラ色さ。俺だって手あたりしだいだ。結構ゲスなこともしていたしね。まあ、だからまだ独身だ、はは」

冗談を交えて話す柴野につられ、今日子も笑う。

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