俺と初めての恋愛をしよう
「それでも後藤はあきらめられなくて、植草先生に相談していたわけよ」
「はい」
「で、今の今日子ちゃんはどうなの?」
「一緒に暮らしなじめているのに、まだ、答えが出ていないようなモヤモヤ感があって。部長のことは好きです。でも、それがどのくらい、どのようになのか分からないんです。部長が私のことを大切にしてくださるのは痛いほど感じていますが、それに対して、私の熱量はどうなのかと」
「今日子ちゃんはまじめなんだね。表現の仕方なんて人それぞれじゃない。後藤みたいにぐいぐい表に出す奴もいる。今日子ちゃんのおとなしい性格で、後藤みたいに迫ったらひいちゃうよ。相手がしてくれたように返さなきゃいけないと思うようじゃ、愛じゃないよ。だって、してくれたからその分返さなくちゃって思いでしょ? 愛情ってそうじゃないじゃん」

柴野に言われ、今日子は気づく。
確かに後藤が愛情を言葉に出し、表現してくれるからこそ、今日子が幸せになる。後藤の幸せは、今日子が明るく、傷つかないように日々を過ごすことなのだ。そこに自分がいればいい。今日子の傍にはいつでも後藤がいる。そう思っていることが、後藤の幸せなのだ。
今日子は勘違いをしていた。後藤が思ってくれているくらい、自分は後藤を思っているだろうか。そのことを気にしていた。
それに、柴野の話を聞いて気付いたことがある。
嫉妬。後藤の女性関係を聞いて、嫉妬をしたのだ。熱くモヤモヤとして、イライラが胸のあたりを占めていた。
初めて感じるこの強い感情は、後藤を強く愛している証拠なのだ。
誰にも渡さない。そんなことも思った。
柴野に気づかされた今日子は、涙があふれてきた。

「あら、あら、泣いちゃだめじゃん。俺、良いこと言っちゃった?」

今日子の向かいに座っていた柴野は、ナフキンを手に持って、今日子の隣に座った。
ホロホロと涙を流す今日子の頬を、そのナフキンで抑える。

「すみません」
「いいって」

そんな時、店のドアが乱暴に開いた。

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