俺と初めての恋愛をしよう
 「僕は、今日子さんに長いことずっと思いを寄せていました。しかし、海外転勤を命ぜられ3年日本を離れることになりました。その間、ひと時も忘れることはありませんでした。そして、帰国後、今日子さんに会った時、さらに思いを強くしていきました。ご両親にしてみれば、まだ付き合って間もないと思われるかもしれませんが、僕は、此処に至るまでに6年かかったんです」

 後藤が語る言葉を真剣に聞き入る。妹は既に泣いていた。

「今日は、お許しを頂きに参りました。今日子さんと結婚させて下さい。必ず幸せにします」

 後藤は席を立ち、深々と頭を下げた。

「後藤さん、私達、反対はしませんよ。大切に育ててきた、大事な娘が選んだ相手だ。私達の子育ては娘が連れてきた相手が結果だ。どうやら、大成功だったようだな、お母さん」
「そうね、幸せになりなさい、今日子」
「ありがとう、お父さん、お母さん」
「おめでとう、お姉ちゃん」
「さあ、後藤さん座って。堅苦しいことはなしだ。食べようじゃないか。今日子とお母さんが腕を振るって作ってくれたんだ。温かいうちに食べよう」

 世話好き、聞きたがりの母はそれから堰を切ったように後藤を質問責めに合わせた。
 その間も後藤は紳士に受け答えをし、父親は黙って酒を勧めた。
 妹はというと、容姿の良い俊介の友達だったらイケメンがいるのではないかと、紹介してくれと頼んだが、38歳という年齢を聞いて、おじさんだなあ。とつぶやいて、後藤の古傷に塩をすり込んだ。

 和やかな食事が終わると、父親が後藤を書斎に誘った。

「お母さん、コーヒーを持って来てくれ」
「はーい」
「後藤さん、こちらです」
「はい、失礼します」

 用意された椅子に腰を下ろし、暫しの沈黙が二人を包んだ。
 そこへ、コーヒーを持って、今日子がきた。

「はい、コーヒー」
「ありがとう」
「お父さん、部長のこといじめないでね?」
「ばか、そんな事するわけがないだろう。男同士の話をするだけだ」

 後藤が苦笑いをする。

「分かった。じゃ」

 一瞬、目を合わせ、部屋を出て行く。
 書斎の部屋へ後藤を招き入れる。

「どうぞ」

 コーヒーを勧める。

「頂きます」

 向かい合わせに座ることなく、横並びに座り夜の庭を見ながら男の話をする。

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