俺と初めての恋愛をしよう
退職するまでに有給を消化するには、もっと休まなければ予定していた年度末の退職は難しい。
向かいに座っている社員も、先輩である今日子が休まないので、気を使っていたようだ。申し訳なく思った。

「林さん、また久しぶりに飲みに行きませんか?」
「佐々木さん」

佐々木と昼食を取るようになってから、今日子のデスク周りには、昼食仲間が増えた。
秘密の場所は後藤の隠れ家のようになり、かっこうの昼寝の場所になっている。だが、それを起こしに行くのは今日子の役目だ。
数少ない女性社員が集まり、わいわいがやがやと話をしながら過ごしている。

「今度は男子抜きで、このメンバーで予定を立てているのですが、どうですか?」
「わたしなんか、年上ですし、皆さんでいかれてください」

今日子の同期は同じ部署にはいない。結婚退職したものも多く、今の部署は年下ばかりなのだ。

「えー、関係ないですよ。ねー」

佐々木は、他の三人に同意を求めた。

「そうですよ、行きましょうよ」

そんな風に誘われて、今日子の週末金曜日の予定は決まってしまった。

「だから、金曜日は遅くなります」
「そうか、楽しんで来い」
「はい」

毎日定時で帰ってくることはなくなったが、それでも前のように夜遅くになることはなく、後藤は帰って来ていた。
食事を待っていると、怒られてしまうので、残業の時は、先に食べている。
お互いに身体のことを気遣いすぎて、譲り合ってしまうこともある。
夕食を食べて、食後のコーヒーを淹れる。
ソファでニュースを見ながらコーヒーを飲むのが、後藤の日課だ。

「お先にお風呂に入りますね」
「ああ」

とにかく密な時間を作りたい後藤は、少しの時間でも勿体なく思え、自分よりも先に今日子に寝仕度をさせた。
当然、そんなことは今日子がわかるはずもない。
一緒に入りたい願望が湧いてくる。
まだ、今日子は一年生の段階だ。
もっとゆっくり。結婚してからでもいい。ムラムラと出てくる欲望を、後藤は抑えている。
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