やさしい色


 ―――ミナと和眞の仲がこじれた。



 公立高校の一般入試が迫る2月、ちょうど今ごろのことだった。


 部活で一定の成績を上げていたミナは、年内のうちに推薦入学が決まっていた。

 あまり勉強が得意ではない和眞は、しかし彼女と同じ学校に進もうとして日夜受験勉強に明け暮れていた。

 放課後、同じ学校への進学を目指す生徒が集まる講習会で毎日顔を合わせていた柊は知っている。

 和眞がどれほど必死で、切実で、切羽詰まっているか、それは日増しに少なくなる口数や笑顔から容易に読み取れた。



「ミナは、彼氏が自分のために頑張ってくれてるのを知りながら、でも、寂しかったんだと思う。

 勉強に時間を奪われて、ちっとも自分をかまってくれないに彼氏に、理不尽だけど……不満を抱いてた」


 ミナはそれをちゃんとわかっていた。

 でも、我慢できない自分の弱さを完全に呑み込むこともできなくて、もがいていた。

 柊にも気兼ねして、推薦仲間や私立の友だちと過ごす時間が増えた。

 それをありがたいと感じたことはほとんどなかった……と、柊は正直思っている。

 割合で言ったら、1対9……くらいかもしれない。

 無論、9は疎ましい方の数字である。


 推薦をもらえるだけの、そこに至るまでの血の滲むような努力と実績があってこその余裕だとはわかっていても、

 必死で勉強している自分たちの目の前で、今季のあのドラマはくどいだの、昨夜のバラエティのあの芸人はおもしろくないだのなんだのと、

 くだらないことを声高に、腹を抱えて話されると、いやでも嫌悪がしたし、頭に来た。


「彼よりいくらか余裕があったから、わたしはそれでもまだ平気だったんだけど、彼は最後の実力テストでも判定が合格圏内に入らなかったらしくて……」


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