ダイアモンドリリー
「、、、寒っ、、!」
流石に薄いトレーナーにコートでは薄着過ぎたか、両腕をさすりながら猫背&がに股でぽてぽて歩いている。
賑わう繁華街を少し抜けて寄り道がてら昔よく来ていた公園に行ってみる。
クリスマス。
冬は嫌いだ。
私には10歳から前の記憶がない。
正確には忘れてしまっているだけだと聞くが、思いだす気配もなければ思い出そうとも思わない。
ただ、冬の寒い空の下今日のように雪が降る中雪の中に埋もれて何も考えずにもう眠ってしまおうと思っていた所から私の記憶は始まる。
気づいたら中年の女性に手を引かれ、今の施設に連れてこられた。
その女性は施設のお母さん的存在でみんなに本物のお母さんのように慕われているが私は好きじゃない。
おばばと呼んでいるが親しみを込めて読んでいるわけじゃなくて、みんなのようにお母さんと呼びたくなかった。
別に反抗したいわけじゃないけれど、もともと大人ってのが信用できなかったんだろう。
何のために生きているんだろう。
拾われた身の私。
誰の子かもわからない、誰の役に立つでもない。
嫌いだ
「嫌いだ、、、。」
この空も
「この空も、、、。」
この雪も
「この雪も、、、。」
「私も」
毎年[この日]は空を見ては涙を流す。
あぁ、このままこの雪のように誰にも知られずに
消えていきたい。
ガバッ
「うわぁ!!」
急に目の前が真っ暗になり身動きが取れない
「びっくりした?」
時間が止まる。どうやら上を見て立ち止まった私に抱き着いていたらしい
「フェル、、!?」
「やっぱり寄り道してたー、もー信じらんない帰ってこないと思って心配で見に来たらスーパーにまでたどり着いてないとはね!これだからゆとりは!」
心配して迎えに来てくれたのか。
ありがたい、ありがたいけど、、、
「、、、ん、苦しい離して」
155㎝の小柄なゆなに175㎝のイタリア男の力は強すぎた。
「あ、ごめんごめん、一緒に行ってあげるから」
ほら。と差し伸べられた手をガン無視してスタスタと歩いていく。
「おいバカゆな!俺の優しさをー!」
泣いて腫れた目に気づかれることのないように少女は足早に歩きだした。