ダイアモンドリリー


ウイーーン


「いらっしゃいませー」


自動ドアの前に立てばアルバイトの主婦たちの元気ならっしゃいコール。

少女と、少し後ろには小走りでついてくる男がスーパーの入り口をまるでテーマパークの入り口のような足取りでまたいでいく。



「「わーーーーい!!」」


夕飯などはすべておばばが買ってきてくれるのでスーパーなどは来たことがない2人。

目に星が写っている。


「フェル、フェル!これなあに!?」

「なんだね、ゆな」


指差したのは買い物かごを載せるカート。


「そ、、、それは!!」


フェルに衝撃が走る。





たくさんのカートが一列に並んでいる光景は初めて目にするもので、初スーパーの二人にはずいぶん興味深い物だった。

「噂に聞いたことがあるぞ」

「何に使うの?」

「、、、これはだな、客がより店内を楽に回れるように開発されたものだ勝手に使っていい」


ふふんっと鼻をならし、腕を組む。

いつもゆなになめられてばかりいるフェルはやっとこさ年上らしい頼りがいをアピール出来る時が来たかと得意げだ。


「ゆな、ちょっとこっちに来なさい」

「なになにー?」



そして



ガラガラガラーーーーーー!!


「使い心地はどうだ!?」

「すごーい!これなら確かに楽にお店が回れるね!!」


買い物かごを走りながら押すフェル。

カートにはゆなが体育座りで髪をなびかせている。

人が見ているが何も知らないバカ2人は気にすることもなく、間違った情報を鵜呑みにして完全に楽しんでいる。


「まずは、、、ケーキと言えば生クリームだ!!ゆな隊員!標的はまず牛の乳だ!悔しくないのか!?妬ましくないのか!あの巨乳が!!!」


「宣戦布告であります!!あ、、!噂をすれば生乳発見しました!!」

生クリームと牛の乳が混ざって卑猥な言葉に聞こえるそれをカートに乗りながら、スピードを落とさずにかっさらっていく作戦らしい。

ゆなが手を伸ばし、あと数メートル!


もう少しで生乳が手に入る!!!


もう少し!!



もう、、、!!!







バッ!!!!!!


「ちょっと、、!!それ使いかた違います!!、、、うわあ!」



ガッシャーーーン!!!!


「「ギャーー!!」」



スーパーゴーカートの前に立ちはだかった男は見事に、そして豪快に轢かれた。


男を盾にやっと止まったカートだが。

「おいおいお客さん気をつけろよ、曲がり角はちゃんと右、左、右ね!」

「助手席にレディ乗ってんのよ!轢かれたついでに腎臓の一つでも売ってくかい」


完全にヤクザコントな2人をよそに魚コーナーにダイブした男は

ぶつけた背中を抑えながら震える手で

ベチャッ!!

フェルの顔面に新鮮な魚をお見舞いしてやった。



「何やってんですか!!店内で走るな!!そもそもそれは乗り物じゃなくてかごを乗せるものです!!」

正当なツッコミだが


「、、、この、、、何すんだこのタコ!!」


ドビチャ!!!


「あれ?サマ!??」


やられたら3倍返し、根っからのケンカ気質でもう周りなど見えていないフェルに変わってカートの中の少女が同じ顔が2人いることに気付く。

しかしサマもご立腹なようで両手に魚。

一方フェルは両手に、野菜。



「うぉぉぉおおお!!!」

「だぁぁぁあああ!!!」


ドカーーーン!!


こうなってしまってはこの兄弟喧嘩はだれにも止められないのだ。

ゆなはというとこの光景には見飽きているのでもはや見てもいない。

それより棚に並んだ商品が気になるようで目を輝かせている。



「ちょっと、、、すいません、喧嘩はやめて頂戴!、、あら?」



ただ事でない騒ぎにさすがに店員が駆けつける。

人だかりをかき分け少年2人を止めに入るが。


「「うるせえ!!」」

その手を勢いよく振りほどく


すると店員は




「コラアアアアアア!!お客さんに迷惑やろが!!店員さんにも謝りぃ!!それとお魚さんに、土下座や土下座!!」


ドゴン!!









シーーーーーーーーーーーン。。。








店員は双子の頭をわしづかみしそのままマッハのスピードで地面に打ち付けた。


お客様一同は魂が抜けたかのように静まり返る。

魚に向かって強制的に土下座させられた双子は頭から煙を出しピクリとも動かない、もう息もしていないかもしれない。


顔はまるで








店に並べられた魚のようだった。



















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