淡夢【短編集】
僕たちは市場に付いた。


ここは一番にぎわっているようだ。


サナとはぐれないようにしないと……


あれ……？


さっきまで横にいたはずなんだが……


僕は辺りを見渡した。


「ファイぃーー！ こっちこっち！ おもしろい食べ物があるよー」


サナは市場に並ぶ食品を見ていた。


僕は安心してサナのもとに向かう。


僕は、自分は少しのことでは動揺しないと思っていたが……さっきの僕は、誰が見ても慌ててただろうな……


「へぇ、これは確かに変わった食べ物だ……。昼間にはこんなものまで売っているのか……」


その食べ物は表面にギザギザのくぼみがあってとても甘い果物だった。


一般的に『ぱいなっぷる』と呼ばれるらしい……


外見はそれほど美しくはないが、中身はなかなか美しい。


「ねぇあっちにも行こうよ！」


「うぉ！」


サナは僕の腕をコートの上から掴んで引っ張った。


するとサナは何かに目を奪われ、急に立ち止まった。


ドッ！


「キャッ！」


僕は止まれず、サナに後ろから激突した。


僕は吹き飛びそうになったサナの腕を掴まえ、素早く引いて、僕の胸に引き寄せた。


「わっ！」


しかし、少し力を入れすぎ、サナは僕の胸に勢いよくぶつかってしまった。


「痛ったぁ～、はな打ったぁ～」


サナは鼻を両手で押さえて涙目になっている。


「す、すまないっ！」


僕は慌てて、痛がるサナを純白のコートの中に包み込んだ。


そして僕はコートの上からサナを抱き締めた……



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