美容師男子×美麗女子
「そうなの?彰」
思考が鈍っている。
香水の香りと、ほど良いアルコールの回りが心地いい。
「物心ついたときから、なんか、俺っておかしいなって思ってた」
彰の空になったグラスにワインを注いだ。
こんなに酔ってるのに、酌をしてしまうのは職業柄なのかな。
「父子家庭だったんだけど、俺にはどれが母親か分からなかった」
ぼんやりと、その意味を理解した。
「愛人さんを連れ込んでたってこと?」
「まぁ、そんなかんじ」
彰は苦笑する。
「なんか、よく分からなくなったんだよね」
「なにが?」
くしゃくしゃと頭をなでられる。
ぼんやりとして火照った思考がさらに鈍くなった。
「父親の愛人と寝たり、色んな女の子と遊んだりしたけど、やっぱりどうやっても恋愛には届かなくてさ」
彰がグラスを置いた。
彰の冷たい指が熱いあたしに丁度よかった。