美容師男子×美麗女子


「愛された事のないやつは、愛せないんだって」


彰の腕が、力強くあたしの体にまわった。

いつもなら振り解くあたしが、その手を拒まなかったことに自分で驚いた。


「父親が、最後に言ったんだ」

「彰のお父さんは?」

「俺が高校に入って、ぱったりと見てないかな」


俺、捨てられたみたい、ださいでしょ?

耳元で呟く彰はふざけていても、あたしにはそう聞こえなかった。

彰も酔ってるからか、いつもより饒舌だ。


「初体験が11歳、おかしいでしょ?」

「ええ?」


思わず振り向いた。

彰は相変わらずへらへらしていた。


「俺、おかしいんだよ。きっと、生まれた時から。いっぱい人と付き合ったのに、全然わかんないんだよ。だって女の子って、嘘しかつかないでしょ」


どきりとした。

あたしの心を読み取られたような気がした。


「俺が何言っても、みんな口揃えて、好き、好き、って」


髪を梳かれる。

ふわりとした香水の匂いが漂った。


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