美容師男子×美麗女子
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よかった、今日は仕事だ。
携帯に入っているスケジュールを見て、あたしは胸を撫で下ろした。
「・・・・千咲、聞いてる?」
「え、あぁうん、聞いてる」
「もー上の空ー」
あたしは携帯を机に置いて、さっきまで喋ってた友人に顔を向けた。
あんまり食欲は無いけど、パートで忙しい母が珍しく作ってくれたお弁当は、残すわけにいかない。
「うちの彼氏がねー」
「うん、うん」
タコさんでもウサギさんでもなんでもないウインナーを食べながら、興味も無い話を真剣に聞く。
この友人は彼氏の事しか喋らない。
そんなに可愛いってわけでもないのに、大学生でイケメンでちょっと強引でサッカーができる頭脳派彼氏がいるらしい。
出来すぎた話だなぁ、とは思っていたけど、あたしはうすうすこいつの“虚妄彼氏”に嫌気がさしてきたところだ。
今度はあたしが口を開く。