美容師男子×美麗女子










□ □ □



よかった、今日は仕事だ。


携帯に入っているスケジュールを見て、あたしは胸を撫で下ろした。


「・・・・千咲、聞いてる?」

「え、あぁうん、聞いてる」

「もー上の空ー」


あたしは携帯を机に置いて、さっきまで喋ってた友人に顔を向けた。

あんまり食欲は無いけど、パートで忙しい母が珍しく作ってくれたお弁当は、残すわけにいかない。


「うちの彼氏がねー」

「うん、うん」


タコさんでもウサギさんでもなんでもないウインナーを食べながら、興味も無い話を真剣に聞く。

この友人は彼氏の事しか喋らない。

そんなに可愛いってわけでもないのに、大学生でイケメンでちょっと強引でサッカーができる頭脳派彼氏がいるらしい。

出来すぎた話だなぁ、とは思っていたけど、あたしはうすうすこいつの“虚妄彼氏”に嫌気がさしてきたところだ。

今度はあたしが口を開く。


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