美容師男子×美麗女子
「・・・・・うん、そう。失恋、ね」
ぼんやりと春樹くんの顔を思い浮かべる。
その次に出てきたのは、お姉ちゃん。
「千咲ってさ、嘘が多いよな」
千尋はマニキュアのハケを仕舞った。
今度は小さい箱を取り出す。
「嘘?」
「あぁ、はじめて会った時から思ってたけど」
千尋は小さい箱の中のものを黒い紙に乗せた。
きらきらしてる、ストーンだった。
「千尋」
「ん」
千尋は丁寧にピンセットでそれをつかみ、まだ乾いていない親指のネイルの上に乗せた。
綺麗なストーンが一個、親指に乗る。
「あたしを含めて、女の子はみんな、嘘でできてるんだよ」
そう、それはあたしの優しいお姉ちゃんだって、そう。
「・・・・・・・ふぅん」
千尋は少しして、声を漏らす。
だけど、もう口を開かなかった。
まるで、作業に集中したいんだ、って言うみたいに。
「女は、きらきらしてると思うけど」
「は?」
千尋はあたしの顔を見て、笑った。
はい、千尋の乙女度アップ、なんだけど。