美容師男子×美麗女子

「バイトとかしてんの?」

「バイト?してない。だって働くの、めんどいじゃん」

「ニートみたいな考えだな」

「うるさい」


嘘。


「好きな人いる?なんか千咲さ、めっちゃ付き合ってる人居そうだよな」

「なんでそんなこと聞くの?まさかあたしのことが好きだとか」

「ごめん、俺美容に恋してるから」

「乙女だなぁ、好きな人なんて居ませんよ」


嘘。


「早く恋してみたいよ」

「そう言う奴、中学にも居たわ」

「・・・・・・何それ」


嘘を重ねる。

嘘を重ねると、本当のあたしじゃない“あたし”が目の前に出来上がる。

その“あたし”を前に歩かせて、本当のあたしはそいつの後ろをひっそりと歩くんだ。

完璧な“あたし”は崩したくない。

誰にも見せたくない。

可愛くて、優しくて、面白くて、頭がいいあたしが、今のあたしなんだ。

それ以外は、見せたくない。


「うん、完成」


千尋は余ったストーンを入れ物に戻して、マニキュアのビンをしめた。

あたしの足は前より華やかになった。


「本当、すごいね千尋」

「いや、こちらこそありがたい。ごめんな、練習台なんかにして」

「それ、あたしの方が利益あるからいいの」


藍色が光る。

その上に散りばめられた、曇りの無いストーン。

きらきらきらきら輝いていた。


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