美容師男子×美麗女子

あたしはベッドから下りて、真下の床に座り込んだ。

いきなり下りてきたあたしに驚いて、千尋が首を傾げる。


「千尋の癖毛はわざとなの?」


千尋の髪を結んでいるゴムをほどく。

黒い髪がふわりと千尋の顔につく。

甘い、甘い匂いがした。


「あぁ、これ、地毛」

「可愛いよね、くるくるしてて」


千尋の髪に触れてみる。

あたしなんかよりもずっと質がよくて、さらさらだ。


あぁ、家に帰ったら今日も春樹くんはいるのかな。

仕事なのかな、でも会えないのも嫌だな。


「・・・・どうした」

「ちょっとだけ」


黒いセーターで、もこもこしている千尋の体に手を回した。

セーターの下は意外にも細くて、だけどそんなにがっしりしてない。


「俺、筋肉ないから千咲の期待に添えねぇよ」

「うん、本当に筋肉ないね。肉もないけど」


大きく吸い込む。千尋の甘い匂いが鼻腔を擽った。

千尋があたしを襲うどころか、あたしが千尋を襲ってるようなもんじゃん、これ。

まぁ、いいか。


「千尋って、お菓子みたいな匂いがする」

「うーん、甘党だからだな」

「匂いって関係あるの?」

「知らん」


ごめんね千尋、あたしの頭は春樹くんのことだけなんだ。

だけど、ちょっとだけ。

春樹くんじゃないけど、今は誰かに触れていたい。


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