美容師男子×美麗女子
「ただいまー」
寒かった外から帰ってきて、すぐに家の扉を開ける。
玄関で靴を脱いで、あたしはリビングのドアを開けた。部屋の温度差が身にしみる。
「あ、おかえり!遅かったね」
「お姉ちゃん!」
一瞬どきりとした。
リビングには、楽しそうにお喋りをしていたようすの、母と姉。
「今ね、結婚式の話してて」
「そうなの」
制服のジャケットを脱ぎながら、あたしは2人の話に耳を傾ける。
「お姉ちゃん、今日は仕事休みなの?」
「ううん、ちゃんと働いてきたわよ!今日は残業ゼロデー!だから定時で帰ってこれたの」
お姉ちゃんは普段は業務雑用をしている。雑用といってもパソコンとにらめっこばっかで、大事な書類を任されている仕事らしいから、大変みたいだ。
「ね、千咲はどう思う?」
どきり。
やめて、あたしになんかに話題を振らないで。
「あ、何が?」
「えっとねぇ、」
お姉ちゃんが楽しそうに華やかなパンフレットを広げる。
優しい栗色のセミロングが柔らかに揺れる。
仕事のために、黒髪でストレートに伸ばし続けるあたしとは大違いだ。
優しい笑顔であたしに顔を向ける。
そんな顔で、春樹くんに愛想振りまいてるんでしょ?
あたしの黒い部分が込みあがってきた。