青のキセキ
時計の音が響く部屋。
テーブルの上には、2つのティーカップ。
「この紅茶、美味いな」
課長が紅茶を飲みながら言う。
カップを持つ長い指。私とは違った太い関節、短く清潔に切られた爪。
男の人の手。
課長の手をじっと見つめる。
「美空?」
そんな私を変に思ったのか、課長が私の顔を覗き込む。
「きゃ!」
目の前の課長の顔にびっくりして、私は紅茶を溢してしまった。
「熱っ!!」
テープルから下に伝った紅茶が足にかかる。
「美空!」
課長が慌てて周りを見渡し、タオルを見つけると、私の足を拭いてくれる。
「足赤くなってるな。冷やした方がいい」
そう言うなり、課長はキッチンへ行ってしまった。
なにやらガサガサと音がしたかと思うと、冷蔵庫の空く音が聞こえ、ガラガラと氷を触る音。
戻ってきた課長の手には、ビニール袋に入った氷。
「これで足を冷やせ。勝手に台所漁ったぞ」
課長から氷を受け取り、赤くなった足を冷やす。
「大丈夫か?さっきの事もあるし、病院行ったほうがいいか?」
「大丈夫です。迷惑かけっぱなしですみません」
心配そうに私の様子を伺う課長に、私は謝るしかできなかった。