青のキセキ
俺の側を離れ、部長と話をしていた綾の元へ翔と近付いて行くと、何事かと綾もこちらへ寄ってきた。


「翔、私を許す気になった?」



「あり得ない」


綾の問いかけに、冷たくあしらう翔。




「これから翔に付き合うことになった。駅まで送るから、家に帰ってくれないか?」

「でも、今日は...。帰ってくるまでマンションで待ってるわ」


綾は何が何でも今日したいらしい。


それだけは避けたい俺の心情を察してか、翔が綾に言い放つ。


「今日は俺の家に泊まるから、帰ってくんねぇかな?待たれると、せっかくの楽しい気分を害するからさ」



「……」



睨まれながら翔に言われた綾は、怯えたような表情を見せ、黙りこんでしまった。


そして、小さな声で「わかった」と呟いた。



後片付けを終え、親睦会が終わった。



綾を駅まで送ろうとしたが、電車で帰ると拗ねてしまい、1人で駅の方へ歩いていった。



綾にしてみれば、月に1度のチャンスを台無しにされたんだから無理もないか。


美空に出会ってから、綾を全く抱いてない。
そのせいか、綾は今日の夜をかなり期待していたみたいだからな。


ともかく、今日綾とのセックスは免れたことに安堵する。



翔と歩いていると、翔の嫁の隣にいる美空が視界に入る。




ドクン、ドクン。


鼓動が鐘を打つ。



まさか、美空も?


「翔、もしかして美空も誘ったりなんかしてないよな?」


「もちろん誘ったよ~」


当たり前だろというように、あっけらかんと明るく答える翔。


おい、一体何考えてるんだよ。



美空のいるところへ歩いていくと、彼女もびっくりしたような表情でこっちを見ている。



なるほどな...。十中八九、美空も翔か久香さんに無理矢理誘われたらしいな。












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