青のキセキ



課長と二人きりになる機会は、思いの外、すぐにやってきた。




終業時刻間際、給湯室で溜まった洗い物をしていた時のこと。

課長がそばを通りかかった。




課長に言うのは、今しか...ない。



幸い、周りに人の気配は無く、


「課長」


と、思い切って声を掛ける。




私の声に振り向いた課長。



「美空、お疲れ」



優しく微笑みながらの方へ近づいてきた課長は、軽く私の頭を叩き言った。







「お疲れ様です。あの、実は...」




「課長~!ここに居たんですか。さっき、奥さんから電話がありましたよ」




修一さんのこと、時計のことを課長に言おうとした、その時。



課長を呼ぶ石川さんの声が聞こえた。



「何度携帯にかけても出ないから会社にかけたって言ってましたよ」



石川さんからは死角になっているようで、私に気付かずに石川さんは話を続ける。



「あ、あぁ...携帯、上着のポケットに入れっぱなしだ...」


私を気にしながら石川さんに言う課長。



続けて綾さんからの伝言を伝える石川さんの言葉に、胸が詰まったような痛みを得た。




「もうすぐ会社に着くらしいですよ。今日、奥さんの誕生日らしいっすね。プレゼントを買いに行ってから、食事に行くんだって教えてくれましたよ」




「出張も終わったし、今日は奥さんと幸せな時間を過ごしてくださいね~ムフフ」

と、からかい気味に課長に言って、石川さんは企画部の部屋へ戻って行った。




綾さんの誕生日...。


そっか。


今日は、課長は綾さんと過ごすんだ。



そうなんだ.........。







< 459 / 724 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop