青のキセキ
課長と二人きりになる機会は、思いの外、すぐにやってきた。
終業時刻間際、給湯室で溜まった洗い物をしていた時のこと。
課長がそばを通りかかった。
課長に言うのは、今しか...ない。
幸い、周りに人の気配は無く、
「課長」
と、思い切って声を掛ける。
私の声に振り向いた課長。
「美空、お疲れ」
優しく微笑みながらの方へ近づいてきた課長は、軽く私の頭を叩き言った。
「お疲れ様です。あの、実は...」
「課長~!ここに居たんですか。さっき、奥さんから電話がありましたよ」
修一さんのこと、時計のことを課長に言おうとした、その時。
課長を呼ぶ石川さんの声が聞こえた。
「何度携帯にかけても出ないから会社にかけたって言ってましたよ」
石川さんからは死角になっているようで、私に気付かずに石川さんは話を続ける。
「あ、あぁ...携帯、上着のポケットに入れっぱなしだ...」
私を気にしながら石川さんに言う課長。
続けて綾さんからの伝言を伝える石川さんの言葉に、胸が詰まったような痛みを得た。
「もうすぐ会社に着くらしいですよ。今日、奥さんの誕生日らしいっすね。プレゼントを買いに行ってから、食事に行くんだって教えてくれましたよ」
「出張も終わったし、今日は奥さんと幸せな時間を過ごしてくださいね~ムフフ」
と、からかい気味に課長に言って、石川さんは企画部の部屋へ戻って行った。
綾さんの誕生日...。
そっか。
今日は、課長は綾さんと過ごすんだ。
そうなんだ.........。