青のキセキ
ドアが閉まり、美空の姿が見えなくなったと同時、俺は無意識に立ち上がっていた。
「どうしたの?」
と、俺を見上げる綾。
「すまない、美空に言い忘れたことがあったから行ってくるよ。すぐ戻るから」
そう言って、綾の返事も聞かずに俺は店を飛び出した。
店を出て周りを見渡すと、すぐに美空の後姿が目に入った。
急ぎ足で大通りの方へ向かう美空を走って追いかける。
段々と近づく彼女の姿。
俺は、彼女の名を呼んで、腕を掴んだ。
振り向いた彼女の瞳に浮かぶ、大粒の涙。
心臓が握り潰されたように痛い。
大丈夫だから綾の元へ戻れと言う美空。
俺の目を見ようともせず、俯いて強がる美空。
大丈夫だと?
そんなわけないだろうが...。
声が震えているくせに。
肩も震わせているくせに。
分かってる。
俺を困らせないための嘘なんだと分かってるさ。