青のキセキ




「気が付きましたか?」


ふいに聞こえた声にビクッとする。声のした方へ顔を向ければ、一人の男性の姿がそこにあった。




「あなた...は...」



「無事でよかった。赤ちゃんも大丈夫だそうです」



爽やかな笑顔でそう言ったのは、昨日展望台とホテルで出会った男性だった。



赤ちゃんも無事だと知り、涙が頬を伝う。



そっとお腹に触れる。



まだ...ここにいてるんだね。

私と一緒に生きてくれているんだね。















「妻と浜辺を散歩していたら、あなたが海に入って行くのが見えたんです。間に合ってよかった」


涙が落ち着くのを待って、男性が教えてくれた。









「海岸においていた美空さんの荷物は看護師さんに預けてありますから。それと...名前とか連絡先が分かるものが何かないかと先生や看護師さんに聞かれたので、鞄の中を勝手に見ました。すみません」



「...いえ...迷惑をおかけして...すみません...」


全てを終わらせようとしたのに、また人に迷惑をかけてしまったことに情けなさを感じる。



一体、どれだけの迷惑をかけたらいいのだろう。



赤ちゃんも無事だとしってホッとすると同時に、今こうして生きていることに戸惑いを感じている自分がいた。

矛盾した気持ち。




死ねなかった...。何もかも終わらせようとしたのに、それすら神様は許してくれなかった。


私はこれからどうすればいいのだろう。

どこへ行けばいいのだろう。





何も...考えたくない。






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