青のキセキ
「心配を...おかけして......申し訳...ありま...せ....」

震える声。

課長に聞こえるか聞こえないぐらいの小さな小さな声。


「本当によかった」


心底ホッとしたような課長の様子に、私は何も
言えなくて。


どれだけ心配をかけたの?
どれだけ傷付けたの?


私は課長を直視することが出来ず、俯く。




「ごめ...な...さ...」





「謝るのは俺の方だ。美空が姿を消したのは俺のためだったんだろう?俺は...お前を守るどころか、傷を付けることしか出来なかった」


そんなことない。


そう言いたいのに、声にならない。


「すまなかった」


目を閉じて謝る課長の姿が、とても切なくて。


胸がいっぱいで言葉が発せず、ただ必死に首を横に振ることしか出来なかった。





.................................




「今、何してる?」


課長がJPフードを辞めて実家の会社を継いだことや薫さんの言っていた新しい取引先が課長の会社だということを聞いた後、課長に聞かれた私は返答に困った。

課長の話を聞く限り、薫さんは私のことを話していないようだった。私がホテルへ出勤した際も薫さんや葵さんは何も言ってなかった。それは、きっと彼らなりの配慮なんだろう。

二人とも、まさか私と課長が会うことになるなんて思ってもみなかっただろうから。


だけど、また出会ってしまった。





あの小さな町でお互いを知らずに生活しているだなんて不自然だし、そんな嘘が課長に通用する訳がない。


結局、私は正直に話すことにした。



「実は今...『和』で働かせてもらってるんです。薫さんと葵さんは、私と課長とのことを全て知っているから、私のことを課長に何も話さなかったんだと思います」


「そうだったのか...お前の話が出なかった訳だ」




「明日ホテルに来られる常連のお客様が、多江さんの作る山菜の佃煮をいつも大量に買って帰られるんです。今日も作って貰った佃煮を取りに多江さんのお店に行ったんです。まさか、課長に会うことになるなんて思ってもみませんでした」


どうやら、あの女主人は多江さんという名前らしい。


人の良さそうな笑顔を思い出す。





「俺もだ。まさかこんな所でお前に会うなんて...ほんとうにビックリしたよ」





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