魔王と魔女と男子高生と
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「……なるほど。
信じられないが
何故か生け贄に
されかけたリビアンを
偶然通りかかった
空砂が魔物を撃退して
救ったと」

「そうだよ。
魔物ったら
勇者の生まれ変わりで
ある僕の姿を見るなり
ダッシュで逃げたんだよ
すごくない??」

あの後、とりあえず
リビアンの家に
泊めてもらうことに
なった陸琉と空砂は

別れていた3日の間の
話をしていた。

「……何でだ??
お前、言っとくが
俺たちはただの
男子高校生だ。

だから、メ○も、
メラ○ーマも
使えない」

「パル○ンテなら
使えるよ」

「……パル○ンテも
使えないからなって、
話の腰を折るな……
とりあえず、俺たちは
少なくとも剣も魔法も
使えない」

当たり前だが、陸琉と
空砂は思考回路は
ともかく普通の

男子高校生だ。

つまり、特殊技能
(例えば魔法とか)は
当然使えない。

「……陸琉は
剣道習ってたよね?」

空砂は何故か得意気に
聞いてきた。

「剣道と実際の剣術は
全く違う!!それに
そもそもこの世界に
日本刀のようなものが
あるかも怪しい」

その言葉にがっかり
したように、

「サーベルとか
っぽいよね」

と空砂はため息をついた。
「そうそう……じゃあ
なくてお前どうやって
魔物を退けたんだ??

この流れだと俺たちは
このまま魔物退治に
いくはめになる。

とりあえず元の世界に
帰るまで死にたくない」

陸琉は空砂のペースに
持っていかれそうだった
話の軌道を元に戻した。

「死なないよ。
僕は勇者だからね
いざとなったら
コンティニューか
教会で復活するし」

しかし、そんな陸琉の
気持ちなんか露知らず
空砂はいつもの自分
勇者だものな中2
発言を始めた。

「……お願いだから
思い出してくれ……」

しかし、
陸琉は疲れすぎて
深い眉間のシワを
作りながら突っ込まず
項垂れた。

「まぁ、敢えて言うなら
最初魔物が僕に
飛びかかって来た時……
匂いがしたよ」

「匂い?」

「うん。ほらこの世界に
来た時にキンモクセイの
木があったでしょう?
あれの匂い」

そう言うと少し
空中に視線を向けながら
何かを探すように、

「その匂いがしたら、
魔物はすぐに立ち去った
んだよ」

とまた左右を見渡して
言った。

「それだ!!」

陸琉はやっと確信に
迫れた喜びでいつもとは
違う大きな声で言った。

「とりあえず
キンモクセイを
持っていけばなんとか
なるかもな」

しかし、その答えに
空砂は残念そうに、

「……だめなんだよ、
この世界に
キンモクセイはないよ」

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