魔王と魔女と男子高生と
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「長老!!」

空砂は老人を見るなり
叫んだ。

陸琉は空砂のいつもの
リアクションに
あきれたように
深いため息をついた。

「ほほっ。面白い
お嬢さんじゃの。
まぁ、確かにワシは
長老と呼ばれても
遜色のない年じゃが、
長らく人里から離れて
生活しておるからな……
誰からも慕われては
おらんのじゃよ」

白い髭をたなびかせた
老人は少し寂しげに
微笑んだ。

「長老、この
クロノクロアはなぜ滅んだんですか?」

「……お前話が唐突
過ぎるぞ」

流石に空砂に釘を刺した
陸琉だったが空砂は
気にした様子もなく、

「なぜ、これほど
栄えた都市が滅んだの
ですか?」

と再度聞いた。

老人は少し不思議そうな
顔をして、自信の
白い長い髭の先を指で
いじりながら、

「名前は知っているのに
滅亡の理由は
知らないのかい?

まぁ、古い都じゃから
そういうことも
あるんじゃろう」

そう言って老人は空を
仰いだ。

真っ青な空の色と
白い雲が縞模様を
描いていた。

「一晩で滅ぼされたん
じゃ邪悪な者に」

「それは魔王?」

空砂の言葉に確かに
老人は一瞬動揺した
ようだった。

しかし、すぐに元の
穏やかな表情に戻る。

その時、湿り気を含んだ
一陣の風が吹いた。

「……いや。しかし、
真実を知る者は最早
この風しかおらぬよ」

老人はまた空を仰ぎ、

「そろそろ、雨がくる。
1年にほんの数回しか
降らぬ雨が。
お前さんらも村に
帰りなさい」

老人は若者を諭すような
優しげな表情でふたりに
言った。

「村には帰れないんです
だって僕らは異界から
きたんです」

とあまりに直球を空砂が
投げたため陸琉は慌てて、
「おい、その説明じゃ
わかんねぇだろう!!
実は……」

と補足をいれようとした。が、

「なんと!!お前さんら
異界から来たのかい??」
「そうなんです!!
帰れなくて困ってます」

とあっさりふたりは意志を疎通させた。

「……こんなスムーズに
話が進んでいいのか……」
陸琉はあっけに
とられたが面倒なので、
そのままに
することにした。

「ならば、この玉を
あげよう」

老人はふたりに黄色い
掌にギリギリ収まる
くらいの水晶を
渡した。

「これは何ですか?」

「この水晶は瞬転石
(しゅんてんいし)と
行って使うと一番近い
村までワープ出来る石だ」
「やったー!!めっさ
RPGですね!!大切に
使います」

空砂は受け取った石を
握りしめてジャンプした。
「あっ、だめじゃ!!
石を握りしてジャンプ
したら……」

と老人が言おうとした
時には空砂の姿が
消えていた。

「おっ、おいどういう
……」

「やってしもた。
瞬転石は石を握りしめて
ジャンプすると一番
近い村に移動するんじゃ。
1回使うと砕けて2度は
つかえないと説明
したかったんじゃが……」
「いっちまった……
とりあえず追いかける
しかなさそうですが……」
陸琉は疲労困憊の
表情で老人を見た。

「……そうじゃな
とりあえず追いかけよう」
異界に飛ばされて
早速面倒を起こした
空砂に深いため息を
つきながら

陸琉は老人と一緒に
砂漠を歩き出した。

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