孤独の戦いと限界
分かれ道に着く。
夕暮れは、やっぱり風が冷たくなる。

『又、宮川君の事、色々聞かせて下さいね』

『俺の話は面白くないぞ』

『そんな事ないです、じゃあバイバイです』

『…ああ、バイバイ』

…‥


〜自宅〜
〜夜〜

俺はニュースを見たかったが、友美がクイズ番組が好きでチャンネルを変えられた。
相変わらず、俺は読書ばかりしている。

『………♪』

『(最近のニュースも凄いよなぁ)』

『………♪』

『(汚職、不祥事、職務怠慢‥)』

『ああ〜、面白かったぁ』

『(強力な指導者が必要だけど、徒党を組み、罪をかばい合う奴らが多すぎるぜ)』

『兄さん、チャンネル変えていいですよ』

『‥うん』

『兄さんもクイズ番組見れば?、面白いよ』

『やらせ番組なんて面白くない、恋愛ドラマのリアルシーンなら』

『リアルシーンって?』

『恋愛場面で、ベッドシーンを全て映してるところ』

『…兄さんのH!』

『真剣な話、必要な場面だよ。男と女、ベッドシーンの思想統一する上、でさ』

『…もう』

『AVで変なことばかり学んでたら、女は変な要求をされるかも知れないんだぞ』

エロい事って、ビデオでしか学べないのか?
フェラとか、ムチとか、これ以上男が不必要な学習、刺激を覚える事に危険を抱くよ。


…‥


『そろそろ寝るか?』

『そうね、明日も早いし』

TVを切り、電気を豆電球にしておく。

『‥兄さん』

『ん?』

『…どうして藤先生は、兄さんにあんな質問したのかな?』

『好きな人の質問か?』

『うん、全然必要ない質問だよ』

『藤先生は冗談で質問したんだよ。あまり気にすると疲れるだけだよ』

『…気になるぅ』

『ほら、忘れるのだっ』

不意に友美を引き寄せて、抱きしめる。

『!、兄さん‥』

『ギュッ、と♪』

『………』

『少しは頭から離れたか?』

『え〜と…』

『どうだ?』

『…うん、兄さんの温もりが伝わる事に神経がいくよ』

『そ、そうか』

『‥暖かいね』

『冷たけりゃ死んでるところだ』

『もう!、ロマンチックじゃないよ!』

俺の温もりに、酔いしれてた友美が軽く睨む。

『明日も早いんだから寝ようぜ』

『………』

『友美?』

暫く答えず離れず、時間が過ぎる。

『………』

『‥うん、寝ようか』

…‥


〜自室〜

『………』

冗談で抱き締めたつもりだけど、刺激が強かったかな。
まぁ、もともと本当の兄弟ではなく、途中で合流したようなものだから、まだ他人の意識が残っていたかもしれない。

『……複雑な事ばかりだ、最近は』

さっさと電気を消し、布団を被る。

…‥


〜昼休み〜

ひたすら無駄な授業を、苦肉の思いで乗り越え昼食タイムだ。
筋肉が固まってる気がして、背伸びをする。

『兄さ〜ん』

友美か。

『なんだ?』

『お昼食べに行きませんか?』

『‥おごり?』

『そんなんじゃありません』

『…まぁ、いいか』

…‥


〜食堂〜

今日はいつもより食堂が込んでいない。
久しぶりに食堂で昼食をとる事にした。

いつも外だから、暖房が少し心地よい…。

…‥


友美には席を取ってもらい、俺はオーダーを受けて、食堂のおばちゃんに注文を通した。

…‥


『珍しい事もあるんだな』

今日は本当に、学生らが食堂で昼食をとらない。
野菜中心のメニューが好みじゃないのかな、色々推理してみる。


『山菜丼と山菜うどん、どっちがいい?』

『あれ、兄さんも山菜なんだ』

『まぁな、栄養バランスがいいんで。んで、どっち?』

『じゃあ、山菜丼にしようかな』

オーダーを友美に渡すと俺は早速、うどんを食べる。

『ねぇ、兄さん』

『ん〜?』

『‥お揃いだね♪』

『山菜だけな』

『ペアルックじゃなく、ペアフードだね♪』

『はたから見ると、目立つかもな』


友美が嬉しそうに食べてると、ふと何かに気付き、俺の頭の上に目がいく。

『………』


友美の視線がそのままだ。
俺の中で異変を感じ、素早く振り向く。

『優助君♪』


恵理が立っていた。
戦慄していた俺の体が、すぐに緊張感が溶けて、安心感に満ちる。


『ああ、恵理。今日は外じゃないのか?』

『!、……』

『うん、隣いいかな?』

『いいよ、座って』

『(いつの間に、名前で呼び合う間柄に!!!)』

『じゃあ座っちゃいますね、…あれ?』

俺と友美の料理に目がいってる。

『どうしたの?』

『…何か、お揃いみたいな感じですね』

恵理は弁当。俺は山菜うどんで、友美は山菜丼。

俺と友美で山菜料理を食べる時は、あまり意識を感じないが、恵理だけ料理が違うと、男と女だけに俺と友美の山菜料理が親近感を出してしまう。

『♪〜、♪〜』

友美は何故か、楽しげに料理に夢中だし。
挨拶もしなかったし、心なし恵理に素っ気ない感じがする。


『………』

『なんだ、山菜料理が好物なら少し食べていいよ』

『あっ、いや、そういう訳じゃないんですけど‥』

恵理の表情が、友美を見て曇った気がする。
とりあえず、場を和ませる事にした。俺は山菜を箸でつまみ、恵理の方へ…。

『えっ?』

『はい、あ〜ん』

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