孤独の戦いと限界

商店街を抜けて、バーガーショップでくつろぐ事にした。
貧乏学生だから、あまり高い店に入れないのはつらいところ。


『おごるよ、好きなのを頼んで』

『え、え〜と、じゃあシェイクを♪』

俺はホット珈琲とポテトを頼んで、テーブル席についた。

『今更だけど、おごってもらってよかった?』

『大丈夫だよ、付き合ってもらってるんだし』

『ありがと、今度お返ししますね』

『期待しておくよ』

『うん♪』

『ポテトもつまんでね。飲み物だけだとトイレが近くなるから』

『う〜ん、細かいです』


会話も食も進み、とても心地よい雰囲気になる。
やっぱり相性って、大事なんだなぁ。

…‥


『ねぇ、優助君』

『何かな?』

『私と一緒にいて楽しい?』

『勿論楽しいよ。どうしてそんな事聞くの?』

『例えば、どういうところを楽しいと思うのか、聞いていい?』

『?』

人と人の交わりで、楽しいと思えるなら、分析なんて必要ない気がするが…

ふむぅ‥

『まず相性が合うかな、それと…』

『それと?』

『恵理は俺のつまらない話を、嫌な顔せずに聞いてくれたからね』

『つまらない話?、優助君が話した失恋の事?』

『ああ…』

『つまらない話じゃないよ。楽しい話題じゃないけど、嫌いじゃないよ』

『恵理だから』

『?』

『多分、他の人なら楽しい話を好み、辛気臭い話は嫌うと思うよ』

『う〜ん、そんなものかなぁ』

『楽しみに飢える人間が多くなった気がする。俺の辛気臭い話を聞いてくれるのは、恐らく苦労人だろうね』

『楽しみを求める人は、確かに多くなったと思うけど…』

!、…‥

『…、止めた』

『えっ?』

『恵理には辛気臭い話ばかりしてると思う。楽しい話もしないとね』

『…、優助君‥』

真剣味な顔つきで見てくる。
俺、何か失言したかな…


『…なに?』

『そんな事気にしなくていいんだよ。話題なんて選ばないと話が出来ないなら、本当の友達じゃないんだよ』

『………』

そうだろうな…。
でも相性がここまで合うなんて、中々いないんだ。
話題を選ぶ悪いクセを出してしまったかな…。


『………』

『ボーっとしてるよ、優助君』

『相性が合いすぎて、つい、ね。嬉しくなった』

『お互い、謙虚だからね♪』

『俺は恵理を可愛い人としか知らなかった。俺の話をここまで聞いてくれる人とは思わなかった』

『………』

『偏見が裏目に出るとはね、もっと早く知り合うべきだったよ』

『それはわかります♪』

《クスっ》
恵理が吹き出す。

『今の俺、おかしかったか…』

『ううん、違うの♪』

『じゃあ…』

『私も男の人には偏見があったんだよ。沢山、男の人に告白されては断ってきたんだよ』

『断ったのはタイプじゃないから?』

『軽い気持ちで言い寄る人が多くて。タイプの人もいたけど、全然知らない人と付き合うのは抵抗があって、恐かったかな‥』

やっぱり、普通の女性から男を見ると、怖いイメージもあるんだな。


『ふむぅ…、友達から親しくなる方が、今の時代に当てはまっているかもね』

『告白してくる男の人の考えを知ると、怖くなったりも…』

それは下ネタかな…。
実際に、強引な男がいるから申し訳ない気持ちを覚えてしまう。


『ごめんね、男は節操なしで』

『どうして優助君が謝るの?』

『俺も男だもん。同性として申し訳ない気持ちを覚えたんだ…』

『…やっぱり優助君は、どこか他の人とは違うね』

『よく言われるよ。でも今の自分を気に入ってるんだ』

『今時、珍しい性格です』

『………』

一口も飲んでいないホットから、湯気が立ち上らなくなった。
珈琲を頼んでいたのを忘れていた。


『…ねぇ、優助君』

『なに?』

『…私の理想のタイプって解りますか?』

『え…、唐突だね』

突然のプライベートな質問に、声が裏返ってしまう。
そんな事聞いていいのかな…。

『………』

『難しいね…。信頼を置ける人?、一般論でしか解らないな』

『信頼を置ける人で正解。私は初恋を成功させて、恋に恋する乙女になりたいの』

『…そうか』

恵理は下を向いたままだが、言葉には力を込められていた。


『恋愛に真剣なのは、いい事だよ‥』

『どうして失恋なんてあるんだろうね』


失恋の単語がきたか。
すごく関心があるんだけど、俺の場合、話が尽きそうにない気がする。

…‥

< 19 / 45 >

この作品をシェア

pagetop