孤独の戦いと限界

〜一ヵ月後〜

恵理の励ましのお陰で、何とか極度な嫉妬から逃れる事が出来た。

俺と会うといつも絶やさず、スマイルをしてくれる。
その笑顔が好きで、荒んだ心を癒してくれる。
真剣に悩み事を聞いてくれて、嫌な顔一つしない。

優しさが嬉しかった。


『救出って、こんな気持ちになるんだね』

『助け合うのは、友達として当然ですよ』

『友達として、か…。嬉しい響きだね』

『届かない人として…』

『届かない?』

『ううん、こっちの話です』

…‥


恵理のスマイルが心地良くて、最近は恵理と一緒の日が多くなった。

陰で付き合ってる、と噂されるほど…‥

ホントは友美の事を考慮して、特定の付き合いはいけないと思うが、自分自身の立ち直りの為だと割り切る。

友美とは暫く連絡はしていない。勿論どうしてるか、状況は知りたいし、友美の声も聞きたくなる。

ただ…、俺の感情を刺激する男友達の話だけは避けたかった。

俺自身の精神の安定を求める為にも。

友美からも電話をしてこない。恐らく、椎名を通して情報を得ているんだろうか…

…‥


〜図書室〜

『………』

読書が出来る元気は取り戻せたな。
後は友美と…

『あ〜、居た!』

『ん?、椎名‥』

『読書中に悪いけど話していい?』

『ああ、構わないよ』

『最近、友美と連絡は取ってるの?』

『最近は連絡してないかな』

『どうしてよ?』

『ん?』

『どうして?』

問い詰めてくる椎名。
完全に怒っている様子。

『‥友美が上京した時、淋しさを抑え切れなくて、一時期は狂いかけた。自分を落ち着ける時間をほしかったんだ。だからかな…』

『せめて事情を伝えてあげなくちゃ…。向こうも不安でしょ』

『まぁな…』

男友達の話題を配慮すれば、幾らでも会話が出来たけど‥。


『しっかりしてよ、彼氏じゃない』

『違うって、椎名は事情を知らないから‥』

『最近の噂だと、あんたと藤さんがデキてるって、本当なの?』

『噂だろ?、噂で付き合えるのか?』

『でも本人とよく一緒にいるじゃない』

『相談に乗ってもらっているだけだ』

『………』

『………』

がっついてくるな‥、友美の差し金か?
それとも椎名の現状確認の探り針か?


『友美、心配してるよ』

『‥わかってるよ』

『なぜ、連絡しないの?』

『…俺自身、ずっと病んでたんだ。友美が男友達を話題に出す度に落ち込んでいた』

『それなら、本人に気付かせてよ』

本音を言わなかったのは、俺の浅はかな考えだったか…


『誰も理解出来ないだろうが、その余裕すらなかった…』

『…宮川』

『ん?』

『…その、今日は連絡してあげてよ』

『?、友美に?』

『………』

『…解った、ちゃんとするから』

『…絶対ね』

そう言ってその場を去る。とりあえず、友美に連絡させたかったのかな。

『…用件だけ言えばいいのに』

…‥


〜下校中〜

『?、…‥』

嫌な気分だ…。
妙な胸騒ぎがする。第六感が何かを感じ取っている。

だが結局、何も思い当たらない。
気にすることなく、帰宅に着いた。

…‥


〜自宅〜

この時間なら、友美の携帯に電話しても大丈夫だろう。

《P、P、P、…》

『………』

…‥


かからない…、遊びに行ってるのかな。
新しく友達ができたのなら、付き合いもあるんだろう。

『P』

まぁいいか、一時間後にでも…

《ブブブ…‥》

『あれ、友美?』

《P》

『もしもし、友美?』

『あ‥、兄さん…』

『悪い、何かしてた?』

『ううん、何も…』

『………』

『………』

何から話そうかな…
とりあえず、俺の今までの心情を打ち明けるか。

『前は一方的に電話を切ってばかりでごめん。男の話に嫉妬ばかりして…』

『………』

『今日は椎名が友美に電話入れる様に、って強く言われちゃって…』

『………』

『淋しい思いさせてごめん。もう落ち着いたよ』

『…兄さん』

『何かな?』

『最近、藤さんと仲良いみたいですね…』

『!!、えっと…』


動揺した‥。
二股したつもりはない。
ないけど行動自体は、十分友美を不愉快にさせるだろう。

『仲良いって‥、元気付けてくれただけだよ。でもどうしてそれを…、椎名に聞いたのか?』

『そうだよ、私はもう兄さんの中では他人なの?』

『………』

…やっぱり怒ってる。
でも今回は、電話を一方的に遮断し、恵理と親密関係を作った俺が悪い。

友美が男友達を作り、それを話題に出されるのがツラかった、なんて言い訳にすらならない。

『ごめんなさい』

『………』

素直に、俺から謝ることにした。
反応がないとこを見ると、相当ご立腹の様子なのだろうか…。

…‥

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