パパはかわら版
この親子は、事情があって、勇一が家事をしていた。勇作の母というのが、呉服問屋で番頭格として働いていた。この頃の、ファッションデザイナーのようなもので、瓦版に広告を出したり、黄色版(瓦版のタブロイド紙)に身だしなみを載せたりするのも、母、時江の仕事であった。その時江は、結婚よりも、仕事というタイプだったのだが、近くのうどん屋で働いていた、勇一のうどんに惚れ上げて、結婚をしたのだった。そのために、この時代には珍しく、妻が働き、夫が家事をするという家庭だった。勇介は、かなり甘やかされて育った子だった。妹の小雪は、子供のいなかった、母の時江の姉に養子に出されていたが、時々家に勝手に帰ってきてしまっていた。時江はそれを、怒るのだが、父の勇一は、小雪をかわいそがって、きたいときはくればいいと、時江には内緒でいっていた。そのために、小雪は、よく帰ってきていたのだ。

3人は、どこへ行くでもなく、近所の道を、確認するかのように、うろうろしていた。
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