【完】山伏ネコの旅日記

 ピチチチチ…。

   ピチチチチ…。


ピチチチチ…。


 …旅だちの朝は雲のない晴天だった…。



 オレを山岳の麓近くまで送ってくれた野犬たちといよいよ別れの時がきた。



 “じゃあ…。
この辺りで…!”


 振り返ったオレを見るなり子犬たちが鳴き声をあげる…。



 “猫仙人さま…!行かないでよー!”


 “そうだよ~!もっといろんなこと教えてよ!”

 子犬たちは…口々に別れを惜しみ鳴き声をあげた。


 “こら!
泣いて猫仙人さまを困らせるんじゃないの!”


 母イヌたちは…子犬たちをなだめる。



 “みんな…!
 本当の知識とは…自分で体験して五感で感じて習得するものなんだよ。
 君たちが…これから体験して感じていく知識は無限大に広がって君たちの中に知識として残っていくはずだから…それを次の世代に語りついであげてね。
 そしたら…きっとまた会えるよ!”


 “ほんとに?”

 オレは…子犬たちの問いかけに大きく頷いた。


 “最後まで…世話になったな…。”


 その様子をみていた野犬の一匹がオレに深々と頭をさげた。


 “…こちらこそ…。
 君たちには…本当に感謝しているよ!
 どうもありがとう…!”


 俺も深々と頭を下げた。

 “ひとつ…聞いてもいいか…?”

 突然の問いかけにオレは頷いた。


 “…本当の名前は?”


 野犬の突然の質問にオレは…驚いた表情をみせた。


 “いや…俺たちも子孫に本当の名前を聞かれたら困るからな…。”


 野犬は…照れくさそうな表情で言葉を繋げた。


 “オレの本当の名前は…あかだ!”


 久しぶりに自分の名をいいはなちなんだか清々しい気持ちになった…。

 君の名前は?と聞き返そうとした時…。

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