るぅの涙
病院の前まで一気に走って入り口に着くと、なぜか足が動かなくなってしまいました。
「ここにおばあちゃんが居るんだ……。
るぅは、おばあちゃんの前で泣かないよ。
笑ってるんだもん。
だから、少し遅くなるけど……。

ここで泣いちゃっても良いよね?」

独り言の様に言うと、地図を握り締めて泣き出してしまいました。
誰にも見られないように、うつむいて泣きながら影の方に歩いていると、涙がポトンポトンと足跡の様に付いて来ました。

アスファルトに吸い込まれては、また次の涙が落ちて……。涙の足跡のようでした。るぅはポーチからティッシュを取り出して涙を拭きました。
『るぅはもう泣かないもん……。

ここで泣いたのは、秘密なんだもん。
おばあちゃんに会いに行こう!』

自動ドアの前に立つと、ポンとジャンプをして勢いをつけて入りました。

るぅはトイレに行って洗面台で手をぬらして顔を何度も洗いました。
泣いたのがおばあちゃんにばれたら、余計な心配をさせちゃう。
るぅは、マムがこうやって泣いた顔を隠していたのを見て知ってるんだもん。

ゴシゴシと小さなタオルのハンカチでふき取って、鏡で笑顔をチェックしました。

『ニコニコ笑顔!
うん。これで良いかな?』

エレベーターに乗って、おばあちゃんの病室の前に着きました。
< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop