秘密の時間
ふたりの会話をぼんやりと聞きながら、私は巧さんに従い奥にあるテラス席に腰を下ろした。
さっきの会話を聞いている限り、巧さんはここへ来たのは初めて出はない。
オーナーに名前まで覚えられていると言うことは、きっと何回も足を運んだのかもしれない。
その『彼女』の為にここまで通ったのだろうか?
彼女って何者なんだろ?
席に着くとオーナーが水とおしぼりを持って私達のテーブルに運んでくる。
水とおしぼりを素早く置くと、注文も取らずに店の奥へと消えていく。
その背中を不思議そうに見ていた私に、巧さんは話し掛けてきた。
「注文は後でもいいかな?
その前に、美優に聞いてほしい……」
その声はどこか切羽詰まった感じかして、私の胸を切なくさせる。
初めて見る彼のそんな姿に、私も覚悟を決めなくてはいけない。と思った。
これから語られる巧さんの過去。
ちゃんと受け止められるかはまだ分からないが、でも受け止めなくては!
例え彼から語られる真実にうちひしがれても、私は巧さんの事を最後まで信じたい。