シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



目を開いても、消えぬ目の前の銀の璧。

私達を守護する姿勢(スタンス)は、陽炎のようには消えぬものらしい。


以前敵対して戦った者達が、何故私達を庇うのかは判らないけれど、一番しっくりとくる考え方があるとしたら、知らぬ間に敵の敵は味方になった…のかもしれない。


私はいまだ、今の状況に立ちすくんだ状態のまま、自分達の真の敵は誰なのかよく掴めていない。


副団長を含めた黄幡会とすればいいのか。

櫂様や玲様を追い詰めた紫堂財閥とすればいいのか。

玲様に固執する、周涅や雄黄を始めとした皇城家とすればいいのか。


この三者自体、表面上つるんでいる時もあるけれど、真実のところ本当に手を組んでいるのかどうかの確証がない。

BR001達もまた、何を敵として、誰の意向に沿って動いているのか…判らない。


しかし私は直感的に思った。

ここは…BR001に任せるべきだと。

霊園の舞台に進むことが、多分、"必然"なものなのだと。


――あはははは~。


青く染まった三人目の同じ顔を思い出しながら、私達は周涅の横を擦抜けて、陽斗の眠る場所へ行ったんだ。


そして訪れた霊園では、不自然な陥没に陽斗の墓は潰されていて。

この状況を、銀色のふたりは判っていたのだろうか。

だから行けと言ったのだろうか。


――何これ、陽斗が居たら…浮かばれないよ!!


涙声になって両膝をがくんと地面に落とした芹霞さんは、陽斗を蘇ったのだと信じているのか信じたくないのか、それもよく判らないけれど、やはり陽斗という存在は私達にとっても特殊であり、神聖なんだ。

だからこそ、この有様にした犯人に怒りがこみあげてくる。

渋谷を始めとした、東京の七不思議のような陥没…にも思えたが、どうも直感的に模したものの感が強まった。


――鬼の形? え、どこが? 桜ちゃん、そう見えるの?


質問してみるまでもなかったらしい。

過去彼女がそう叫んだことは、記憶の彼方だった。


ということは、少なくとも今のこれは、彼女はそう思えていないということだ。

黄色い蝶もいない。

歌を歌う不可思議な白い服の女達もいない。


この陥没は、七不思議に似せただけの…偽装(フェイク)だ。


だがこれはどうなのだ?

耳から血流した犬の死骸、周辺にぽこぽこ開いている拳大ほどの穴。

これらも偽装だと言えるのか考えていたら、玲様と約束した時間が差し迫ってしまっていた。


――桜ちゃん、あたしが運転する。庶民の憧れ、高級電動自転車だから楽勝!!


その割には、おかしな音をたてて走り、より一掃苦悶の声が芹霞さんから聞こえていたけれど。


――もう電動なんて、アテにするものか!! 高級自転車なんて無縁な、庶民の底意地見せてやる!! ぬをををををを!!


まるで自動車並の、凄まじい早さで自転車は移動した。

世にも不思議な化けネコが、怯えた顔をして固まるくらいには。




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