シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「しかし由香ちゃん、よく警護が厳重な紫堂本家に入り込めたね?」
そんな玲くんの問いに、由香ちゃんは何でもなさそうに答える。
「情報屋だよ、あの情報屋。あいつが紫堂本家に連れてきてくれたんだ。厳重…でもなかったよ? 立派な門構えから石畳み踏んで堂々と入ってきたから…既にアポとってたんじゃ? それにドア開けたら、執事長だとかいう奴が客間に案内してくれたけど…」
玲くんは桜ちゃんと顔を見合わせて。
「「執事長が?」」
「客間に入ったらさ、情報屋…"此処で待っとき~"なんて言って部屋から出て行ったきり、戻ってこないんだ。どうしたんだろうと少し外を覘いて見れば…"泥棒!!!"っていう声がして、追いかけられてさ。追われれば逃げたくなるもんだろ? で逃げてたら段々と追手の数は増える一方で。…もうホント葉山が見つけてくれなかったらボクどうなっていたか…」
そして由香ちゃんは頬を膨らませた。
「あの"泥棒"っていう声…
あれ絶対情報屋の声だったと思う!!
あいつ…ボクに注意を向けさせてのうのうと出て行ったんだぞ、多分!!!」
「なんで…紫堂本家に、情報屋が……。それに身元不明な者を紫堂に入れたのがばれたら、困るのは執事長なのに…」
「もしかして…青ざめて副団長に相談していたのはそのことだったのかもしれません。後で吐かせましょうか、執事長を…」
「……それがいいかもね。紫堂の管理体制も問われるからね」
ぼそぼそと2人の囁き声が響く。
「そうだ、由香ちゃん。青いパソコンって…まだ持ち歩いてる?」
「氷皇の? ああ、あるよ」
ごそごそと由香ちゃんが風呂敷の包みを開ければ、中から出て来たのは大切な銀の袋。
その中から青いノートパソコンを取出して見せた由香ちゃん。
玲くんの顔が嬉しそうに綻ぶと、由香ちゃんは微妙な顔つきになった。
「何だい、師匠は…そこまでこの"青"に毒されていたのかい?」
「違うよ!!! 僕が欲しかったのはそのパソコンの方だよ!!」
「本当に師匠は、"青"にはムキになるなあ…」
由香ちゃんに同感。
玲くんがそこまで嫌うのは、蒼生ちゃん以外には知らない。