シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
地下がこの素材に完全に汚染されてしまったのは、虚数がこの場所から発生しているからだろうか。
そんな疑念も覚えたが、やがてそれは払拭される。
異質な漆黒の空間の、異質な魔方陣の上に犇めく黒いものを見れば。
それは黒装束の、この世界の住人達だった――。
彼らは座禅の如く胡座をかき、ぶつぶつと、口々になにかを呟いている。
「怪しい宗教だな、こうなりゃ」
煌の苦笑に思わず同意する。
「やっぱ祭祀からして、化けネ……いちちちっ!」
先ほど、エレベータの扉を開けるための"儀式"をしでかしたふさふさの手から、シャキンとたてられた爪が、煌の脛を直撃し、煌はぴょんぴょんと跳ね回る。
そうした騒々しさすら誰もが気に留めることのない、彼らの集中力。
彼らは魔方陣の上にて、一体なにをしているのか。
そんな疑問を焦げ付かすかのように、どこからか視線を感じる。
夢路だ。
彼女は壁に寄りかかり、立っていた。
どうしても思い出す藤姫の面影に苦笑しながら、その孫とする睦月が、以前教えてくれたことが不意に俺の脳裏に蘇る。
それは確か、この世界に入る時の幻影についての説明だったか。
――私達が使っていたのは、久涅や久涅が連れた異人が教えてくれたもので、この呪文は私達の身を守る為のありがたい言葉だった。恐ろしい術の呪文だということは聞いていた。だけど私達は全員が全員、力があるわけではない。
――だから異人達は私達が呪言を唱えれば発動出来るようにと、あの塔がある場所の地下に作ったんだ。力が発現しやすくなる、増幅器を。
そして睦月は、その増幅器をこう言ったはずだ。
――ああ。あんた達の言葉で言えば、魔方陣。
だとすれば、唱えているのは――。
「"ワーム、ウォルミス、ヴェルミ、ワーム"……」
そう思えば間違いない。
小声のざわめきは、その旋律を奏でている。
それは、俺の闇の力に反応するものでもある。
魔方陣。
闇の力。
石の扉。
まるで"約束の地(カナン)"。