シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



地下がこの素材に完全に汚染されてしまったのは、虚数がこの場所から発生しているからだろうか。

そんな疑念も覚えたが、やがてそれは払拭される。


異質な漆黒の空間の、異質な魔方陣の上に犇めく黒いものを見れば。


それは黒装束の、この世界の住人達だった――。


彼らは座禅の如く胡座をかき、ぶつぶつと、口々になにかを呟いている。


「怪しい宗教だな、こうなりゃ」


煌の苦笑に思わず同意する。


「やっぱ祭祀からして、化けネ……いちちちっ!」


先ほど、エレベータの扉を開けるための"儀式"をしでかしたふさふさの手から、シャキンとたてられた爪が、煌の脛を直撃し、煌はぴょんぴょんと跳ね回る。

そうした騒々しさすら誰もが気に留めることのない、彼らの集中力。


彼らは魔方陣の上にて、一体なにをしているのか。


そんな疑問を焦げ付かすかのように、どこからか視線を感じる。


夢路だ。

彼女は壁に寄りかかり、立っていた。


どうしても思い出す藤姫の面影に苦笑しながら、その孫とする睦月が、以前教えてくれたことが不意に俺の脳裏に蘇る。


それは確か、この世界に入る時の幻影についての説明だったか。


――私達が使っていたのは、久涅や久涅が連れた異人が教えてくれたもので、この呪文は私達の身を守る為のありがたい言葉だった。恐ろしい術の呪文だということは聞いていた。だけど私達は全員が全員、力があるわけではない。


――だから異人達は私達が呪言を唱えれば発動出来るようにと、あの塔がある場所の地下に作ったんだ。力が発現しやすくなる、増幅器を。


そして睦月は、その増幅器をこう言ったはずだ。


――ああ。あんた達の言葉で言えば、魔方陣。


だとすれば、唱えているのは――。



「"ワーム、ウォルミス、ヴェルミ、ワーム"……」


そう思えば間違いない。

小声のざわめきは、その旋律を奏でている。


それは、俺の闇の力に反応するものでもある。


魔方陣。

闇の力。

石の扉。


まるで"約束の地(カナン)"。

< 1,357 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop