シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「まだ言うか、この情報屋!!! っていうか、何で電源切れないんだ?」
由香ちゃんはプンプンと怒りながら、右上のボタンを押している。
「由香ちゃん…多分"OK"押さないと鳴り続ける気がする」
玲くんが困った顔をして、あたしと同じ意見を述べた。
「じゃあ…"OK"押すかい? 押して消えるなら今すぐにでも押したいけれど、押すことで変なことにはならないかな」
由香ちゃんの警戒心は相当なもの。
「この青い紙以上におかしなことにはならないよ」
「由香さん、この声をとりあえず止めましょう。耳障りです」
「ん…じゃあ押すね?」
すると予想通り着ボイスは途絶え、変わってメール画面が展開される。
メールタイトルは――
"むふふの動画のプレゼント!!!"
「何このタイトル。本文には動画のアドレスがリンクされていてるね。このアドレスの拡張子…動画は間違いないようだ。メールの最後に何か書いてある」
"腐れた動画でっせ~"
「うわ、明らかに怪しいね、玲くん」
「こういう迷惑メールあるよね、誘導してリンク押させて後で請求来るの。何で人間って、こんな胡散臭いの押そうとするんだろうね」
「本当だよね。っていうか、こんなタイトルと内容のメールリンク、まず押す人はいないよね~」
そう玲くんと顔を歪め合う中、
「むふふふ、腐れた!!!?」
躊躇(ためら)わず…、警戒心が誰よりもあったはずの由香ちゃんが、そのリンクを押してしまった。
「由香ちゃん!!? 何で押すの!!?」
「は!!! しまった!!! 腐れた指が同胞を求めて!!!」
途端、始まった動画。
黒くて暗くて何があるのか判らない。
『大根…』
突如音声が響く。
低い…男の声音。
ひくりと玲くんが反応して。
『大根…』
「玲くん以外にも、大根LOVEな男の子いるんだね」
「……僕は大根よりも…」
「はいはい、ストップ!! 師匠、葉山…これさ…」
画面は次第に鮮明となる。
声の主が明らかになってくる。
「櫂…!!?」
「櫂様!!?」
『ワンワン…』
紫堂櫂…らしい。
目を瞑っているけれど…確かに彼の顔だ。
『ワンワン…』
異国の言葉を口にしているようだ。
ありえない…その呼称。
………。
ワンワン…?