シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そして画面は上にずれ、黒い彼の上にのしかかるオレンジ。

正確にはオレンジ頭が揺れている。


何をしているんだ、ワンコ…?


「馬鹿蜜柑…とうとう櫂様に盛ったのか!!!?」

「何やってんだ、あいつは!!!?」


桜ちゃんと玲くんが殺気立つ。



撮影は一度切れ、続けて――



『ワンワン…ぎゅう』


あまりにも幼い口調を放つ黒が、覆い被さるような体勢のオレンジに抱きついた。


『ワンワン…大好き…』


自ら、オレンジワンコに愛を告げている…ようだ。


………。

禁断?


男×男?

人間×犬?



「「○▽□〒◇!!!?」」


玲くんと桜ちゃんの声は、もう言葉になっていない。


面白いくらいに顔は蒼白で。

いや…面白がっちゃ駄目だけど。



「うっぎゃあああああ!!!!」


由香ちゃんの悲鳴が部屋に木霊する。

これは玲くんや桜ちゃんとはまた違う…そう喜悦だ。

顔が興奮に真っ赤だ。


「うっぎょおおおおお!!!」



凄い顔で、拳を天井に突き出して吼えまくっている。



「鬼畜攻久遠×誘い受け師匠の絡みも捨てがたいけれど、この2人の…ワンコ攻如月×ショタ受紫堂もいいじゃないか!!! むふふふふ、むふふふふふふ!!! ブラボー!!! テライケメンひ・い・ちゃ・ん!!!」


由香ちゃんが何を言っているのか判らない。

判らない単語に、どんな興奮要素があるのか更に判らない。



――ワンワン、ぎゅう…。

――ワンワン、大好き…。


紫堂櫂の辿々しい言葉が…あたしの記憶の中の何かを刺激する。


遠い遠い日。

まだあたしが幼かった頃…


天使の笑顔で同じ台詞を言い、近所の大きいワンコに抱きついた子がいなかったろうか。


大きなふさふさワンコを目の前にして、最初は…怖がってびくびくしすぎて、終いにはとうとう腰を抜かして。


そして心配そうに近付いてきたワンコに顔を舐められたら、堰を切ったように大声で泣き出して。


だけど最後はじゃれ合って、離れるのが嫌だとずっとワンコに抱きついていた子。


これは…思い違い?

これは…妄想?


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