シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
だけどこれだけは覚えている。
あたしはその子といつも一緒だった。
可愛くて、可愛くて。
大好きで大好きで。
いつも手を繋いで、ぎゅうをしていた。
その記憶はあるのに――
それが誰だか判らない。
顔も思い出せない。
…名前すら出てこない。
小さい時の記憶だから薄れても致し方ないと思うけれど…だけどその子を忘れることが出来る自分を、薄情者だと無性に詰りたい気分になった。
執拗に思い出そうとすれば、仄かな記憶は…あたしから遠ざかり消え去っていくようで。
この画面に映る動画は――
儚いものを追い求めるような…
そんな切なさを胸に込み上げさせた。
幸せそうな紫堂櫂の顔。
愛に溢れた紫堂櫂の声。
あたしの記憶にはないものなのに。
ああ、あたしの前で…
紫堂櫂はそんな顔をしたことがなかったのに。
煌の前では…するんだね。
ナンデムネガモヤモヤスルノ?
………。
キョゼツシタノハアタシナノニ。
――俺、お前が好きだ。
唐突に、思い出された煌の告白。
遠い昔のように思っていたものが、やけに近すぎて、やけにリアルすぎて…心臓がぎりぎりと締め付けられる気がした。
現実の一片が走馬燈のように脳裏を駆け巡り、頭の中が忙しい動きをするんだ。
早すぎてよく判らない。
だけど、オレンジの色彩があるのは判るんだ。
それが大切な思い出だということも判るんだ。
あたしが大切に思ったその中に、確かに煌は居た。
だけど何でこんな駆け足な思い出になるんだろう。
思い出と思い出の繋ぎ目が…
何でこんなに曖昧なんだろう。
曖昧な部分に何があるのだろう。