シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「芹霞、首にしっかり捕まってろよ?」

「ん……」


あんなに鎧を着ているのに、音すらしない。

瞬間移動のように、突然移動してくる氷皇。


幻言えど、その速さは本物並みだ。

先刻までの神崎家での氷皇の"遊び"とは違う。


氷皇の足の一振りで、生け垣が崩れ、地面が陥没する。


俺は片手を上げ、風の力を使った。


緑色の風を螺旋状に腕に絡ませて、一気に放出する。


暴風に生け垣は崩壊する。


しかし――

氷皇は向かってきた俺の攻撃を、ゆらりと揺らめくように躱しながら、足1本で弾き返したんだ。

俺の風は更なる猛威を放って俺に返るが、俺はそれを結界で弾き飛ばした。


自分の力くらい、自分で弾ける。


氷皇が薄く笑った。


そう思った時は、足が俺の腰骨に入ろうとしていた。

慌てて宙で身を翻したはずが、既に移動して待機していた氷皇が真上にいて。


ガツッッ!!


氷皇の足に肩をやられた俺は、受け身を取りながら地面に転がる。



『お知らせします、櫂様。30秒になりました』


時間が経つのが早い。


血染め石を握りしめ、バスタードソードに顕現させ、立て続けに襲ってくる氷皇の足を、無様にもゴロゴロと地面を転がって必死に躱しながら、思い切り足首に切りつける俺。

しかし堅固な鎧の前に、角度を違えて剣を振ろうとも、刃は対象に傷1つつけることは出来ない。


そこで剣を口に咥えて倒立し、片手で地面を跳ねると同時に、宙で風の力を放射状に広げ、氷皇を広範囲から1点に捕らえようとした。

しかしそれをたった一蹴りで弾き返し、にやりと笑った氷皇がパチンと指を鳴らした時、あたりの温度は急速に下がっていく。


氷か。


こんな狭い場所では、大ダメージは必須。

俺は芹霞を抱いたまま、それから逃れようと走った。


凍気が背から追ってくる。

俺の軌跡は氷漬になっていく。


舌打ちしながら風の結界を張って駆けれども…氷の猛威は凄まじい。


「カイ…寒い…」


縋る芹霞を強く抱き直して、俺は更に闇の力を解放する。

あたりが暗くなり、俺の手に緑と黒の色が入り混ざったが、その勢いは中途半端で、氷を押し返すまでには至らない。

力を全解放するには両手が必要だ。


「芹霞…あっちにいろ」


芹霞が…巻き添えを食らうから。


「やだ。カイと一緒がいい」

「芹霞、イイ子だから…ああ、あそこの段ボール箱にいろ」

「やだ、やだ!!」


俺から離れたくないという芹霞を愛しいと思うには、事態は切迫過ぎた。
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