シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


悠々とした氷皇が現われる。

酷薄めいたその顔には、嗜虐的なもの以外の情など何もなく。


「芹霞、行けッッ!!!」


俺は片手から2つの力を放出しながら氷の攻撃を抑えれど、押されて一歩後退した。


宙で青と…黒がかった緑の力がぶつかる。

青色の威力が強まっているのは傍目でも判る。


俺の2つの力でも…無理なのか。


悔しい。


俺の力が及ばないというのが悔しいんだ。


負けたくない。

逃げたくない。


力を解放している片手は、自らの力の威力にぶるぶる震えるのに、それを超えるはずの氷皇の様子は落ち着き払っていて、まだまだ余力があるように思えて。


両手を使えたら!!!



「芹霞、行けッッ!!!」

「やだ、やだやだ、やだ~ッッ!!!」


びりびりする片手が…氷にもっていかれそうだ。

それを堪えながら、俺は少しずつ後退しながら、芹霞を段ボール箱まで連れて、中に落した。


「やだやだ、やだやだッッ!!!」

「そこにいろ!!!」



そして俺が両手で力を全解放しようとしたその時――


「!!!?」


氷皇が…力の放出をやめて、俺にくるりと背を向けたんだ。


そしてほぼ同時に――…

『80』


朱貴のカウント。


「え…?」


そこにはもう氷皇の姿はなく。


俺は全開寸前だった力を止め、後ろを振り返る。

怪我をした芹霞は…いなかった。


80になったからか?


段ボール箱に何か紙が揺れている。



『我儘娘の捨て場』


――やだやだ、やだやだッッ!!!


まさか。


翠の言うとおり、"煩悩"という妄執が俺にとって芹霞の形を象っていたというのなら。


欲は捨てろ。


そう…なんだろうか。

氷皇は…俺の理性とでも?


80というクリア数目の前に、最後の芹霞への一撃に躊躇した俺は…直前で自らの欲に負けたということか?


だけど…怪我をしていたんだ芹霞は。


俺は…見捨てることは出来ない。


それは欲がどうのの問題ではなく、俺自身の心の在り方だ。

目的の為に犠牲は必要かもしれないけれど、大切な心までは失いたくなかった。


芹霞…。


消えた段ボール箱の中が、俺には悲しく思えた。


今まで手の中にあった温もりは…

暫く消えなかった。
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