シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「逆流?」

「そう。あの塔が"約束の地(カナン)"に出来た塔と同様のものであるなら、"吸収"の意味合いが強い。その流れを真逆にすれば…外部から溜め込んだ0と1は一時的にまた外部へと解放する…んじゃないかって」


「しかしあの塔は…0と1を虚数にしてしまっているんじゃ…」

「とも思ったけれど、"約束の地(カナン)"の塔が櫂の力を"吸収"したというのなら。櫂の力を利用しようと思う限りは、"食らう"よりも"溜め込む"意味合いの方が強い気がしたんだ。だからあの大爆発は…先に吸い取った櫂の力も関係してると思う」


「………」


「だとしたら、吸い取ったものは何らかの形で蓄積されているはずだ、100%ではないにしても。東京には複数黒い塔が出現し、東京タワーは2つになった。その意味合いも、どの場所で逆流を行うのが正しいのかも今はよく判らないんだ。

あのおかしげな場所以外に、虚数変換が激しい場所があるのか。上手く行けば…虚数以外の特殊なものや、歪みを見つけることが出来るかも知れない。

とりあえず、探索機の結果次第だ」


「その結果はどうやって…」


「ん…今の処、稼働可能は僕の腕時計だけだ。補助的に探索機に連携させていたものだから、数値で流れてくる。本来ならば僕のメインコンピュータで地図(マップ)状のグラフにて、電気の分布図が形成されるはずだったんだ。メインコンピュータが起動出来ない今、電気信号で送られてくるデータを解析して、可視結果として返せる可能性があるのは…あの氷皇のパソコンかな。使用出来るように改良しないといけないけどね。色は腹立たしいけどスペックはいい。由香ちゃん…持っているのかな」


パソコンよりも…由香ちゃん自身が居てくれた方が助かるけれど。

由香ちゃんは何だかんだと、僕のやり方を素直に踏襲してくれているから、もし僕の指示が無効にされても、別の強引な手法で突き進んでくれる。


由香ちゃんも裏世界に行くのだろうか。

彼女は…巻き添えにしか過ぎないのに、そんな危険な場所に行かせるなんて…。


そう嘆いた時だった。

激しい足音が聞こえてきて、ドアがバタンと大きな音をたてて開いたのは。



「玲くん、玲くん!!!」



芹霞が部屋に飛び込んできたんだ。


バスタオル1枚、で。


「あたし――

変な病気になっちゃったかもしれない!!!」


そう、僕に縋ってくる。
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