カプチーノ·カシス


リビングの黒いローテーブルに置かれたカップを見て、あたしは首を傾げた。

「どうしてこの泡ピンク色なの?」

近くで見るまでわからなかったけれど、カプチーノの象徴であるふんわりとしたミルクの泡が、淡いピンクに染まっていたのだ。


「さっきのカシスリキュールをミルクと一緒に泡立てたんだ。カシスの香りするだろ?」

あたしは鼻を近づけた。

確かにコーヒーの香りに混じって、ほのかにフルーティな香りもする。

すごく美味しそう……なんだけど。


「なんか飲むのが勿体ない」


綺麗にデコレーションされたスイーツを食べる時に、フォークを入れるのを躊躇ってしまうように、この桃色の泡を崩すのが嫌で口を付ける気になれない。


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