カプチーノ·カシス
建物のの二十五階に位置するハルの部屋を訪れると、リビングの窓から見降ろす街全てが、クリスマスイルミネーションのように輝いていた。
私はなんだか感傷的になってしまって、その窓に身体を寄せて呟く。
「今日みたいな特別な夜に、恋人同士じゃないのに同じ空気を共有してる男女って……あたしたちの他にどれくらい居るんだろう」
「……さあな」
ハルは気のない返事をして、キッチンのカウンターにあるエスプレッソマシンに粉をセットした。
口の広いカプチーノカップをノズルの下に置いて側面のボタンを押すと、抽出が始まる。
機械音が鳴り、しばらくしてそれが止むと抽出されたエスプレッソがカップに注がれていった。
「いい香り……うちの商品の豆?」
「まさか。会社であんだけ飲んでるんだ、家では違うのが飲みたくなる。これは近所の専門店で買ったメキシコ」
ハルは説明しながらカップにフォームドミルクを注ぎ込み、ふんわりと美味しそうなカプチーノを完成させた。