カプチーノ·カシス


『……はぁ!?もうすぐ充填も終わっちまうぞ!』


電話の向こうで声を荒げるのは、現場で生産に携わる焙煎課の社員だ。


「ですから、それは全部廃棄にしてまた最初から…」

『ふざけんな! L値は範囲内だったんだろ? だったらお前らの舌の方がおかしいんじゃねぇのか!?』


あたしは受話器を握りしめ、ぐっと唇を噛んだ。

……悔しい。きっと相手が課長ならこんなこと言わないのに。


「ジャーマン特有の苦みとコクが足りないとクレームに繋がります。出荷してからお客様に指摘されたのでは私たちの居る意味がありません」

『もっともらしいこと言いやがって……電話じゃラチがあかないな。今そっちに行くから待ってろ、俺も自分の舌で味を確認したい』

「……お待ちしてます」


気を抜いたら涙が出そうだった。

電話の相手は立川さんと言って、声を聞く限りあたしより随分年上なんだろうけど、なにもあんな言い方しなくたっていいのに。


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