カプチーノ·カシス
ほんの少しでも、気分転換になればいいと思った。
風を切って、弾丸にでもなった気分で走るのは本当に気持ちいい。
僕自身、小さな悩みならバイクに乗って走っているだけでいつの間にかどうでもよくなるんだ。
もちろん、愛海ちゃんを乗せるなら安全運転にするけど……
僕がそう言うと、彼女は驚いて目をしばたかせてから、小さく、でもしっかりと頷いてくれた。
――僕にもできることがあった。
そう思って少しだけ誇らしい気持ちになったのもつかの間。
課長も柏木さんも退社時間になっても戻って来なかったので、二人で先に上がり駐輪場に向かう途中で僕は自分の考えの甘さに気がついた。
「愛海ちゃん、スカートか……」
「スカートじゃバイク乗れないの?」
「乗れないことはないけど……」
問題は、二人の吐く息の白さと澄んだ星空が物語っている、この厳しい寒さ。
ストッキング一枚に守られただけの愛海ちゃんの脚ではかなり辛いだろう。