カプチーノ·カシス


“危ないから”――そういう意味で言われたのだと思っていた。

そうじゃないと気づいたのは、すべての破片を拾って透明なビニール袋に入れたハルが、工具箱からハンマーを取り出した時だった。


「……なにを、するの……」


割っただけで充分じゃない。

もういいよ……

あたしはもう痛いほど、失恋を実感してる……


「見ればわかるだろ。粉々にする」


ハルはそう言って惜しげもなくハンマーを振り下ろし、既に割れているカップをさらに小さく、形がなくなるまで……叩き続けた。

途中からあたしは、両手で顔を覆ってしゃくりあげていた。

どうしても見ていられなかった。

自分の恋が完全に壊れていくのを、平気な顔で見ていることなんて……できなかった。


やがてハンマーの音が止み、恐る恐る顔から手をどけると……今度はハルの大きな体に抱きしめられ、視界を塞がれた。


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