カプチーノ·カシス


「だって……そんなに早く失恋のショックから立ち直れないよ」

「それでもいいって言ってるだろ」

「でも……」


あたしの中ではまだ課長に対する気持ちの方が大きいし、ハルをちゃんと好きになれるか今はわからない。

惹かれているのは事実だけれど、こんな曖昧な気持ちのままじゃ……


「……わかった」


不貞腐れたようにそう言って、あたしから体を離したハル。

良かった。待ってくれるのね……そう思って、胸をなで下ろしたのもつかの間。


「仕方ねぇから今日はセフレとして仲良くやるか。場所は俺んちでいいな? そうと決まれば早く帰るぞ」

「ちょっと! 勝手に決めないで!!」

「……前に言ったこと忘れたのか? 俺が寂しいとき、お前は俺に奉仕する義務があるんだよ」


……覚えてる、けど。


「奉仕、までは言ってなかった」

「……ばれたか」


そう言っていたずらっ子のように笑ったハルを見ていたら、あたしも自然と笑顔になっていた。


強引なことしてあたしを泣かせるのも、こうして冗談であたしを笑わせるのも、全部ハルの優しさなんだよね。

あたし、ようやくそれがわかってきた気がする。


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