カプチーノ·カシス


「しようよ」


普通の彼女だったら、こんなに突然言わないよね。

でも、あたしたちにムードなんて必要ないし、それに……


「課長と何があった」

「……別に。やっぱりあたしの一方的な片想いなんだなって思い知らされただけ」


――だから、早く抱いてよ。あたしの心の隙間を埋めて。

すがるような視線でハルを見つめると、彼は大きな手をあたしの顔に添えて、唇を重ねてきた。

そして長いキスのあと、息のかかる距離のままで彼は言う。


「……どこでする?」

「どこ、って……ベッドでしょ?」

「それは、最後だ」


最後……その言葉の意味はつまり、一回じゃ終わらないってことだ。今夜の情事は。

あたしは部屋を見回して、手頃な場所を見つけると、口を開く。


「じゃあ、そこでシよ」


指さしたのは、ダイニングテーブル。

ハルはその選択に満足したのか、ふっと鼻から息を漏らすとあたしを軽々と抱き上げ、そこに腰掛けさせた。


「……そうだ、ねぇやっぱり気になるんだけど」


胸元でシャツのボタンをゆっくり外していくハルに、あたしは言う。


「なんだよ?」


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